【差し金(さしがね)】1000年前から大工の必需品!特徴や使い方を解説

HANDIY(ハンディ)
HANDIY(ハンディ)  

「さしがね」は、昔から大工が重宝する工具で、寸分の狂いもゆるされない建造物を作る人たちからすれば、当時から今でも廃れることなく欠かせない歴史あるものです。

DIY初心者はつい遠ざけがちになる道具ですが、実は様々な使い方ができるので、木工DIYには欠かせない存在と言えるでしょう。

見た目はL字型の定規のようなもので、木材などの長さを求める、直角を図る、勾配を出す、などの目的で使われます。ステンレスや鋼、真鍮など主に金属製で目盛りがついています。

今回は、木工DIYにおける縁の下の力持ち的存在なさしがねの魅力についてご紹介したいとおもいます。

呼び名がたくさんあるが、全部一緒

さしがねの他にも、指金、差金、曲尺(かねじゃく)、曲がり尺、曲がり金(まがりがね)など呼び方は様々です。ちなみに日本工業規格では「曲尺」の表記が使われているみたいです。

さしがねを使いこなすには規矩術(きくじゅつ)を習得しよう

規矩術(きくじゅつ)とは、木造大工の加工技術の一つで、木造建物の仕口・継手その他接合部分など、部材の形状全般を規および矩によって作り出す手法で、大工の数学のようなものです。とても奥が深く、掘り下げて学ぶとベテラン大工並みの知識量となります。


1000年以上前から大工の必需品

発祥の地は中国

その昔、中国に魯班(ろはん)という伝説的な工匠がいました。魯班は鋸を始め、さまざまな道具を作ったと伝えられています。この人が最初にさしがねを作ったと言われています。

日本に持ち込んだのは、聖徳太子

1000年以上前、日本では仏教が普及しだした頃、寺や仏像などを造る為、大工という仕事が定着し始めましたが、まだ大工のレベルとしては乏しい状況でした。その時、聖徳太子がさしがねを中国から持ち込み、大工に広めたと言われています。

聖徳太子の教えが日本文化へ

聖徳太子は当時、太子講といって、大工を集めて規矩術をはじめとした建築の基礎、技術を教えていました。当時は機械、電動器具などないので、こうした聖徳太子の教えによって、当時の建造物を全て手作業で完成させるべく大工の技術が進歩し、定着していったと言えます。
奈良にある日本最古の木造建築、法隆寺もその聖徳太子が指揮し、建立したもので、当時の大工の技術の高さがよく分かります。

さしがねの特徴は?

材質は、ほとんどがステンレス

初期のころは真鍮や鋼製のものが作られていましたが、当時の技術では薄くて長いものに焼きを入れるのは困難と言われていました。その後技術が進み、明治になると外国との貿易により、和鋼から洋網、つまり精錬網へと変わって行きます。

ステンレス製が出てきたのは昭和初期の頃です。その後、今までの鋼製のものは姿を消し、ステンレス製が普及しました。現在ではほとんどのものがステンレス製となっています。

測る、下書きをする

下書きさしがねが便利なのは、主に「測る・下書きをする」ことが出来る点です。

➀測る

木材の長さ、角度を測ることができます。角度に関しては、直角だけではなく、うまく使えば様々な角度を測ることが出来ます。

➀下書きをする

木材のサイズを測ったら、それに合わせて綺麗な線を引くすることが出来ます。直線だけではなく、曲げて曲線も引くことも出来ますし、必要分測った角度も線を引いて残すことが出来ます。様々な使い方が出来て、実はとても奥深いものなのです。

ものを作るとき、木材を必要分カットしますよね。そのときその必要分のサイズを測る際にこのさしがねは大変重宝します。直線だけではなく、曲線や、角を取りたいときにも、まずさしがねを使い木材に目印を付け、カットする時にこの目印通りにカットすれば、寸法通りに木材を加工することができます。そして加工した後も、寸分の誤差がないか、さしがねで確認することが出来ます。

使いやすいのはセンチ・ミリ目盛り

目盛が尺・寸単位になっているものと、センチ・ミリ単位のものがあります。伝統的な木造建築を手掛けるプロの大工さん・宮大工さんたちは尺・寸目盛のさしがねを愛用されているそうですが、DIY日曜大工愛好家はセンチ・ミリ目盛のさしがねで充分ですし、そのほうが断然使いやすいです。

現在、普通に入手できる木材、サッシや屋根材、フローリング材、外壁材など、ほとんど皆ミリ表記で、付属の設計図も全部ミリ表記になっているので、尺や寸で考えることはほとんど無いです。ただ、木造建築のモジュールは今でも尺を基準にしていることが多いので、本格的なものをDIYしたい方は、代表的な寸法をミリ換算した数値を暗記しておくと便利かもしれないです。

一般的なサイズとしては、さしがねの長手(長い方)が50㎝まで刻まれているものが一般的で、これだと家具から建物まで、幅広い用途で使えます。

長手が30㎝までのさしがねもありますが、主に小物作品を作るのならコンパクトで使いやすいと思います。しかし作るものが多種多様で、どれか1本買うとしたら、やはり50㎝までのタイプをお勧めします。

さしがねの各部の名称や特徴は?

さしがねはL字型になっており、長い方を長手(ながて)、短い方を妻手(つまて)、両方が交わった角を矩手(かねて)と言います。

長手の長さは妻手の長さの約2倍となっており、長手が50cmで妻手が25cm、長手が30cmで妻手が15cm、この2種類が一般的なさしがねの大きさとなります。上のインスタ画像では、後者のものが紹介されていますね。

さしがねには表と裏があり、長手を持ち、妻手を右側にしたときにが表となり、この時に見える目盛りが表目となります。上のインスタ画像では、表目が見えています。

逆に妻手を左側にしたときに見える面が裏となり、こちらの目盛りを使うと裏目の表記になります。

表目はセンチ・ミリ目盛り

さしがねの表には、通常の定規と同じ寸法が外側に刻まれています。刻まれている目盛りは1mm単位で刻まれていますが、書かれている数字の単位はcmです。

通常の寸法を測る場合は、全て表の目盛りを使って計ります。

裏目は使い方により複数の目盛りがある

さしがねの裏目は少しややこしく、刻まれている目盛りの位置もさしがねによって若干異なっている様です。

妻手の目盛り

妻手の裏目については、表と同様に外側に通常のセンチ・ミリ単位の目盛りが刻まれています。

長手の目盛り

長手の裏目については、多くて3種類の目盛りが刻まれています。

まず、外側には表目の√2倍の大きさで目盛りが刻まれており、この目盛りを角目(かくめ)といいます。内側については、目盛りが矩手側からと、端側から、2種類のものが刻まれています。矩手側に0があり、端に向かって100まで刻まれているものは、表目の3.14倍の大きさで目盛りが刻まれていて、この目盛りを丸目(まるめ)といいます。逆に端側に0があり、矩手側に向かって伸びているものを、ほぞ穴測定目盛りといいます。こちらは表目と同じ通常のセンチ・ミリ単位の目盛りが刻まれています。ほぞ穴測定目盛りに関しては、妻手の内側に刻まれているものもあります。

裏目を使えば計算いらず!

裏目は、センチ・ミリ単位では測定しにくかったり計算が必要だったりしたものを、この裏目で測るだけで割り出すことが出来ます。したがって、測る対象物や用途に合わせた採寸をするのがよりスムーズになると言えます。

名前のまま、ほぞ穴測定目盛で深さを測る

目盛の単位は表面と同じくセンチ・ミリ単位ですが、さしがねの端から目盛が付いているため、穴の深さを簡単に測ることができます。

角目で円からとれる四角形を測る

角目は中学校で習う直角二等辺三角形の三辺の比率 1:1:√2 の、√2、つまり斜辺に当たる部分が目盛り化されています。1cm、1cm、√2cm の直角二等辺三角形であれば、斜辺の端に角目の目盛り0を合わせると、√2cmのところに角目の目盛り1が来ます。

よって、測る長さは直角二等辺三角形の比率1に当たる部分の一辺の長さをそのまま測っていることになり、円の中にとれる正方形の一辺の長さを測ることができると言えます。例えば、円の直径が角目目盛りで10なら、その円からは1辺が10cmの正方形がとれることになります。

角目では、この様に丸太などの円状の木材から、角材、柱を取り出すことが出来ます。丸太の直径を計れば、どれくらいの大きさの柱が取れるか分かるというのは、木材加工に慣れているDIYerからするととても便利な目盛りですね。

丸目で円周の長さを測る

小学校の算数で、円周率は3.14と教わりましたよね。そして、円周の長さは 円の直径×3.14 で求められることも、私たちは教わっているはずです。

実はこの算数が、丸目に直結しています。丸目は、通常センチ・ミリ単位の3.14倍の比率で目盛りが刻まれています。例えば、10cmの直線を丸目で測ると、31.4 となるということです。

よって、丸目は円状のものの円周が計算せずとも測れます。円の直径が丸目目盛で10なら、その円の円周は10cmだと分かることになります。

これはどういう時に使うのかというと、円周の長さが必要になってくる場面になるので、例えば円状、筒状のものにテープなどでコーティングする時、どれほどの長さが必要なのか、丸目ですぐに測れますよね。具体的には家で壊れた煙突やダクトをつなぐ時、などで活躍すると思われます。

さしがねの具体的な使い方

墨付けをする

墨付けとは木材に加工用の印をつけることで、絵でいう下書きのようなものです。このテクニックはさしがねの基本となります。さしがねを木材に引っ掛けるようにして、直角に線を引きましょう。

角度を測る

さしがねでは数学の三角関数や、内角、外角の定理などを持ちいて、様々な角度が出せます。その都度墨付けをして、寸法通りの角材を取り出すことに繋がります。

主に45°、60°、30°などを測ることができます。文では説明が難しいので、動画を参照していただければと思います。以下の動画では75°なども半端な角度の測り方も紹介しています。

直角精度を確かめる

さしがねの矩手の部分を使って、正確な直角になっているかを確かめられます。

曲線を引く

木材に円形の曲線を引くときにもさしがねが活躍します。さしがねは柔らかく均一な硬さなので、しならせると綺麗な円形を描けます。

注:さしがねにはしなりにくい材質のものもあり、また無理にしならせて曲がってしまうこともあります。このテクニックを使うときは十分注意してください。

等分する

さしがねを使えば、簡単に木材を等分割することができます。

等分することを考える時、木材の端にさしがねの角を置き、水平に、木材の幅をまず測りますよね。この時当分したい数字で割り切れれば簡単ですが、割り切れなかった場合も、計算することなく等分が可能です。

直角三角形は、斜辺の等分比率と、向かい側における垂直線の等分比率が等しくなる性質がありますね。これをうまく利用します。

さしがねを斜めにおき、10や15 など割り切れる切りのいい数字の目盛りを反対側の端に置きます。
そして斜めの状態のまま、等分できる箇所に印をつけます。今度はさしがねを盾に置き、この印に沿って線を引けば、等分線が引けます。

深さを測る

さしがねの裏、長手の先端にあるほぞ穴測定目盛を使えば、先端から目盛が刻まれているので、ほぞ穴などの狭い穴に突っ込んで、深さを測ることができます。

太さを測る

森で立木の太さを測る道具に林尺(りんじゃく)というものがありますが、林尺がないとき、2本のさしがねを使って立木や丸太の太さを測ることが出来ます。

ただし、読んだ目盛からさしがねの巾(15ミリ)を引いた値が太さになるわけです。

さしがね使い方応用編!使いこなしてみよう

正八角形をつくる

まず、正八角形は、8つの辺の長さが同じです。そして、線対称、点対称なので、もちろん向かい合う線の長さ、角度の大きさは等しいです。この性質をうまく利用し、さしがねの角目をうまく使うことで正八角形を作ることができます。

上の画像は、正八角形図形に上下4本直線を引いたものです。(自作画像の為、多少の誤差はご容赦くださいませ。)一辺が1cmの正八角形画像だとします。今、斜め4方向に直角二等辺三角形が4つ見えると思います。正八角形の一辺がこの直角二等辺三角形の斜辺になっていることに注目します。

上述の通り、直角二等辺三角形の垂直線と斜辺の長さの比が1:√2である関係を利用すると、

X:Y = √2:1

となります。よって、木材の一辺の長さを角目で測ると、これがXの長さとなり、これを表目センチで同じ読み分測るとYの寸法になります。

例えば、丸太から取れる正方形の一辺の長さを角目で測ると、目盛り10と出ました。

木材の端から角目10のところに墨付けをします。(=X)

今度は、表目に変え、端から10cmのところに墨付けをします。(=Y)

これを木材の反対側からも、10cm分測り墨付けをします。すると、木材の端から1:√2:1の関係が墨付けにて出来上がります。これを縦横方向に同じ様に印をつけ、矩手の直角を利用し線を引けば、八角形が取れます。

角材を取る

角材は角度によりますが、正方形の柱であれば、上述の通り、角目を使って取り出すことができますね。他にも、角度と線分比率が角目によって割り出せれば、基本的に角材を取り出すことは可能だと言えるでしょう。

屋根勾配を測る

 

View this post on Instagram

 

#勾配屋根 #スウェーデンハウス #アルム #上棟 #天窓

田原由紹 Tahara Yoshitsuguさん(@tarshy1209)がシェアした投稿 –


上のインスタ画像の様に、屋根などに使われる角度については、分度器で測るような何度何分というような単位を使うことは稀で、実際には勾配(こうばい)が使われています。

勾配とは傾きの程度を水平距離と垂直距離の比であらわしたもので、三角関数でいうところの tan(タンジェント)に相当します。水平に距離aに対し、垂直距離b上がる(下がる)、この場合勾配は b / a です。

大工の目線でこのインスタ画像の様な屋根を作るとすると、柱の先端をこの勾配に合わせてカットすることが必要ですね。こんな時さしがねの表目が大活躍します。a : bの勾配線を引くには、木材を横にし上からさしがねを水平ではなく斜めに置いた時、

長手の表目: 妻手の表目 = a:b

になる箇所を探し、そこに墨付けをすれば完成です。

さしがねで木材を加工してみよう

さしがねは木材の採寸、加工にうってつけの道具です。綺麗で長く使う家具には正確さが求められます。DIY初心者ほど、加工の前段階はとても重要と言えるでしょう。またさしがねの規矩術は非常に奥深いので、木材で本格DIYをしたい方はぜひ勉強してみてもいいかもしれません。

是非機会があればさしがねで木材を自由に加工し、本格木材DIYにチャレンジしてみてください!

シンワ測定 サンデーカーペンター 15×30 12416

シンワ測定 サンデーカーペンター 15×30 12416

226円(08/19 13:27時点)
Amazonの情報を掲載しています
HANDIY(ハンディ)

WRITTEN BY

HANDIY(ハンディ)

「古いから全部壊して、新しいものを作る」のではなく、住まいにDIYという体験を付加し、感情やストーリーを纏って最適化しながら持続可能な住文化をつくる。

これがHANDIYの目指す世界。

公式instagramへ 公式facebookへ

おかねのはなし

塗るものを選ばないチョークペイント

塗るものを選ばないチョークペイント