コンクリートが透ける?障子のような現代建築の新しい表現

HANDIY(ハンディ)
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コンクリートが透ける?光を取り入れることが可能なコンクリートとは?

昔から、日本人は、家に光を取り入れる採光の達人だった。
「障子」はその最たるものだろう。
障子を通して外から入りこむ光が柔らかく室内を照らす光景は、わたしたちにとって、かつて胎内に存在していたことを想いださせるかのような心地よさがある。
しかし、近代建築の普及で、壁の多くはコンクリートや新建材となり、採光は窓ガラスから取り入れるのが普通となった。
それは効率的かつ強固な構造であるが、一種味気ないものとなり、ビジネスにとって支障はないが、人間の心は疲れた心を癒す術を失っていった。
そこに登場したのが、コンクリートは光を遮るものという常識を破った、光を透過するコンクリートの登場である。
最初に提案したのは、2001年、ハンガリーの建築家アロン・ロソンチで、「LiTraCon」(Light-Transmitting Concrete)と命名された。

【ハンガリーの建築家アロン・ロソンチが開発した透過コンクリート「LiTraCon」】
(出所:Market Watch/http://www.marketwatch.com/story/futuristic-materials-metal-foam-transparent-aluminum-are-now-a-reality-2015-06-09
原理は極めてシンプルで、まるで劇場のスタートレックに出てくる透明アルミニウムのように、コンクリートそのものが透明になったというわけではなく、コンクリート素材に埋め込まれた光ファイバーが光を通す役割を担っている
コンクリートの風合いは冷たい印象になりがちだがそこがまた良かったりもする。
コンクリートの特性に「透過する」というオプションを付加することにより、現代建築の新しい表現が期待できる。

日本でも似たような取組みがあった。
住田光学ガラスは、アトミックと共同で、一辺の長さが5~10mmの正方形の断面を持つガラス柱を埋め込んだコンクリートパネル「グラスコン」を開発した。
背面から照射した光が、透明なガラス部分を透過するという仕組みであり、こちらもコンクリートそのものが透明性を得たわけではない。
しかし、一見、何の変哲もないコンクリートから光が漏れ出す様は、一瞬、心を驚かせる。
光ファイバーを埋め込む「LiTraCon」の構想からヒントを得たものと思われるが、素材としては高価な光ファイバーを必要としない点が有利な点といえる。
【住田光学ガラスが開発した透過コンクリート「グラスコン」】

(出所:日経アーキテクチュア/http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20070517/507664/
さらに、最近では、イタリアの大手セメントメーカーItalcementiが、「i.light」と命名した透過コンクリートを発表した。
この素材には、コンクリート以外何も使われておらず、単に光を通すために2~3ミリほどの小さな空洞が幾つも空けられているだけである。
コンクリート自体の強度にはほとんど影響ないという。
「i.light」は2010年に開催された上海万博のイタリアパビリオンで採用されたが、外見はコンクリートそのものであるにもかかわらず、パビリオン内部はまるでメッシュ素材で囲まれているかのように陽光が降り注いでいた。まさに障子の世界である。
【上海万博のイタリアパビリオンで採用された「i.light」】

(出所:デジタルマガジン/http://digimaga.net/2011/01/the-transparent-cement-which-lets-daylight
こうした透過コンクリートは、見た目には普通のコンクリートと区別つかないが、自然光や電灯を通し、あたかも障子のようにさまざまな光の表現が可能となる点で画期的である。
建築において採光と壁量との問題はいつも表裏一体であり、透過コンクリートが建築業界に一石を投じることは間違いないだろう。
とりわけ、緑の少ないコンクリートジャングルの中で窒息しそうになっている疲れた都会人にとっては朗報かもしれない。
建築基準法には居室ごとに採光を取り入れる量が決まっているが、透過コンクリートの場合はどのような基準で採用されるのか?
少し先の未来には、無窓状態の家ができるかもしれない。
素材の再定義という面で新たな一面を見せてくれることに期待がかかるが、量産体制にならないと価格が現実的なものにはならないだろう。
しかし、幻想的な建築ができるという面においては、ショップやオフィスビルには新しい表現になる。
小型なものが出てくれば新しい照明を作ったり、玄関ドアなどにも適用できそうだ。


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HANDIY(ハンディ)

「古いから全部壊して、新しいものを作る」のではなく、住まいにDIYという体験を付加し、感情やストーリーを纏って最適化しながら持続可能な住文化をつくる。

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